落款のうつり

28-7-7

長い間たたんでいた為か、落款の色が身頃にうつってしまったので落としてほしい。かつ落款自体もちょっとベタベタてるんだけどこれも直してもらえるか。とのご依頼がありました。

こうゆうことは古いものにはよくあって(古くないものにもある!)、落款に限らず、樹脂や箔でできた柄や螺鈿などにも起こります。
うつったところは問題なくきれいになりましたが、こうゆうのの厄介なのは、うつったところをきれいにすることより、落款や柄自体のベタベタです。

ぼくが今までいろいろやってみた結論は今のところ、樹脂や箔、螺鈿なんかのベタつきは「直らない」です。
シリコンでコーティングしてみたり、ガード加工をかけてみたり、樹脂や箔を上乗せしてみたり。でも時間が経つとまたベタつきが浮き上がってくる感じで。しかもあまりきつくコーティング剤を吹き付けたりすると絹の風合いを損なう恐れもあるのです。
柄足しや箔の職人さんと相談しても、「一回全部落としてもう一回新しくする」というのが無難だそうです。
そのことを説明すると、「千總の落款なのにそんなことできん!」と言われました。勝手にそんなことしちゃそりゃまずいですよね。

今回の件もそうですが、ベタつきが着用に支障のない程度なら、直すことより保管に気を配ることです。
また同じようにたたんでおくと、またうつってしまうことがあるので、当て紙をすることです。しかし和紙を使うとモケモケがいっぱいくっついてしまうのでダメです。おすすめはシールをはがした後の裏紙です。

実はコレ、宅急便の送り状の裏紙(笑)。ちゃんとしたあのツルッとした裏の紙って売ってんのかしら。