墨汁の染み抜き

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何年か前に墨汁が袖の袂についたままにしてあったきものの染み抜きです。

ネットで墨汁の染み抜きを調べると「クリーニング店でも無理」とか「マジックリンで落ちる」とか「乾くともう落ちない」とか、あってるようなあってないような、なんか微妙なものが多いんですよね。

まずは墨とはなにかということですが、染み抜き的に言うと、不溶性の性質を持つ煤(すす)を動物性タンパク質である膠(にかわ)で固めたものが墨です。

煤は不溶性のため石油系溶剤や水では溶けませんが、それだけでは繊維の中に滞っているだけなので、超音波洗浄機なんかの細かな振動の洗いで落ちます。程度の軽いものは手でのもみ洗いなんかで煤を洗い落とせる場合もあります。染料ではないので染まってるわけではないのです。

しかし墨をややこしくしているのは煤を固めている膠です。動物性タンパク質は乾くと固着してしまい、石鹸でもみ洗いしても落ちなくなってしまいます。血液シミや便尿、膿なども同じことが言えます。この固くなった動物性タンパク質を落とすには、タンパク質を分解する酵素を用います。

タンパク質分解酵素を用いて固着している要素を繰り返し取り除き煤を丁寧に洗い落とせば、だいたいのものはきれいになります。

まあ作業着や子供の服なんかだったらご自分でマジックリン使おうがハイター使おうがハミガキ粉使おうがきれいになればそれでいいんですけど、きものとか大事な洋服なんかはむちゃするといっぺんに生地が弱ったり表面がスレたり変色したりキケンなのです!


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